都市型環境共生ビル、見てきました。

2014年02月26日

名古屋市内にある都市型環境共生ビル「グリーンフェロー」を見学に行ってきました。

名古屋駅のある中心街からも近く、道路に面して建つ鉄骨 ALC構造の5階建てのビルです。オーナーの牧村さんに案内していただいたことを、いくつかのポイントにまとめながら(小さなことももれなく書こうとすると、長くなりすぎますので)、グリーンフェローが環境共生のためにどのような工夫や設えがあるのかを報告します。(写真が下手なのは勘弁してください)

その1 壁面緑化(西面)
グリーンフェローの西側は駐車場になっており、壁の全面に西陽があたります。ここに落葉性の蔦が壁一面に伸びていました。季節感を重要視するため、あえて冬に落葉する種の蔦を選んでいます。夏にはここが緑に覆われ、葉が蒸散するときの気化熱によりビル内の温度上昇を緩和しています。
なお、駐車場のオーナーと牧村さんが偶然知りあいであったため、牧村さんの提案で駐車場のアスファルトは透水性になっています。また、南側は公園になっており、ここにも土があり水が染み込みます。この二つの要素も夏の自然な涼しさにつながっているそうです。

西側(画面右)の壁以外のグリーンは、外壁補修のため取り除かれたばかりでした。(一度にすべてのグリーンがなくなるのは淋しいので、西側だけ、時期をずらすことにしたそうです)

壁をつたって伸びたツル。取り除くのは手作業となり工務店さん泣かせとのこと。あえて落葉性の蔦が使われています。夏はビルを灼熱から守ります。

その2 ソーラー発電(南面)
ビルの裏側にまわると、小さな公園があります。ここには、牧村さんが植えたという匍匐(ほふく)性の植物が伸びていました。芝生のような手入れの必要がなく、白く小さな花が咲くそうです。グランドカバーとして魅力的です。
その公園からよく見えるビルの南壁面には、窓のすべてに庇がついているのがわかります。夏の強い陽射しを遮るのにも多いに役立つだけでなく、この庇に太陽光発電パネルが取り付けてあり、ビルの電気代の節約になっています。

ビルの裏(南側)から見ると、窓の庇にソーラーパネルがとりつけてあるのが見えます。

その4 雨水利用(地下)
ビルの敷地全体の地下に、40リットルの雨水を溜め、ビルのトイレの水や植物の水やりに使っています。雨水は、自家発電した電力でビルに配水されてますが、庭から手押しポンプでも汲み上げられるようになっています。災害のとき、飲料水はペットボトル水が配給されますが、トイレの水に困るそうです。「お風呂に入らなくても死なないけど、トイレがなかったら死んじゃうからね」と牧村さん。

その3 ソーラー温水器、風力発電、屋根の緑化、屋上ガーデン(屋上)
屋上には、ソーラー温水器が設置されています。太陽光で暖められた不凍液で、温水が作られます。晴天では60度程度の温水ができるそうです。お風呂と給湯に使われています。小型の風力発電装置もあり、地下の水を汲み上げるエネルギーとして使っているそうです。
また、屋根にはドイツからとりよせたシステムにより、手入れのいらない多肉植物で緑化されています。水やりは自然のままでOKとのこと。
屋上には防水処理をしたうえで土を持ち込み、畑になっていました。果樹も育っていました。樹木は深く根を張る必要があるのでは?と思いましたが、横に根を張ることで健康に育っています。足下を見ていると屋上だということを忘れそうになります。

屋上の畑。土はほこほこしていて、いい感じでした。(人物は関係ありません!)

屋根も緑化。多肉植物を植えてあるので、水やりは自然のままでOK。

その4 木と珪藻土(室内)
テナントのひとつである幼児教育の会社を見学。南に面した窓には、通常の窓の内側に樹脂製のサッシがはめ込まれており、(外と内の窓により)ペアガラス状態になるので断熱効果がアップするそうです。
もとは住宅メーカーのモデルルームとして作られた場所とあって、床や建具もすべて桐・桧などの木と竹が使われていました。家具もホルムアルデヒドの少ない合板と植物性塗料を使ったもの。
壁は珪藻土が塗り込まれています。珪藻土は非常に多孔質のため、空気中の水分を調整し、化学物質を吸着分解します(注・珪藻土の品質によって異なります)。室内に入ると「なぜか気持ちいい」と見学者全員が感じたのは偶然ではなく、木と珪藻土が作る室内環境の効果でした。

その5 人間の健康だけでなく生態系も
牧村さんは学生時代に水俣病の問題を知り、ショックを受けたことが原点になっているそうです。このビルを建てる以前から長年にわたって環境共生を理念とした取り組みを重ねてこられました。グリーンはエコロジーを象徴する色。フェローは仲間という意味で、テナントにもビルの理念にあう団体が集まっています。
全体として一貫していることは、石油由来のものを使わず自然に還る素材を使っていること、雨、風、太陽など自然の作用を最大限に生かしていること、ただ人間だけの健康を重んじるのではなく、生態系そのものを尊重していることです。
最後に、見学の際には出てきませんでしたが、牧村さんが提唱されている5つのSについて、紹介します。
Slow(ゆっくり)
Small(小さく)
Self Reliant(自主・自立・自助)
Sustainable(持続可能な)
Sharing(わかちあい・共生)
今でこそ、納得してくださる方は多いと思いますが、牧村さんがこれを提唱されたのはまだ90年代だったはずです。
何年かかっても、静かに、ぶれずに、問い続けてこられた牧村さんの深い思いにふれた一日でした。

緑がいっぱいの季節にもう一度訪れたい場所です。

都市型環境共生ビル グリーンフェロー
〒462-0844名古屋市北区清水5丁目10-8

http://green-fellow.jp/1_greenfellow/greenfellow.html

1Fはカフェになっていて、ランチも食べられます。

見学会を申し込むことができます。
毎週第2,第4水曜日・毎月第1日曜日
電話 052-916-2241
見学料 個人1000円 法人1500円

Next »