近自然工法

2015年06月19日

「近自然河川工法」という言葉に出会ったのは
1990年代の後半のことでした。

環境や景観を尊重しながら治水する技術。
生態系に配慮しながら本来の「自然」に「近」づける「工法」。

環境・・・小さい生き物が生きられる川づくり。人間に安全な川づくり。
景観・・・美しい川は人の心も健康にする。

福留修文氏(※)の講演で
スイスの実例をスライドや写真で見て、感動しました。

日本では、いつのまにか暗渠化が進み、フェンスで遮られ
直線化した水路のような川が増え、
街の人々は川への親しみを忘れて暮らしていました。
近自然工法を一人でも多くの人に知ってほしいと
福留先生をお招きして講演会をしたり、
現場見学会をしたりして
活動していた時代があります。

ヨーロッパの川より日本の川のほうが急峻なので
そのまんまマネしてもダメな部分があるそうで
近世の伝統的な治水や石組みの技術にヒントがあるとのことでした。

それから今まで年月がたつ中で。。。
「近自然工法で作られている」と思えるような川は
奈良では見かけませんし、
きれいな川は、もともとコンクリート護岸を免れた小川です。

でも「近自然」という言葉は死んでいませんでした。
そのことが最近わかって希望がわいてきました。
時代が変わったのですから、当然かもしれません。
でもまだ、これといって目に見えるものにはなっていませんので
ほんとにこれからなんだと思います。

今では河川だけでなく、街、道、森林にまで
考え方が広がっているようです。
「近自然」は、どちらかというと技術面をさす言葉ですが
誰にでもあてはまるのはそのもとになる思想の部分です。

わたしの場合、工務店でもなく生態学者でもなくフォレスターでもないのに
なぜ興味があるのかなあと考えてみるに、、、。
近自然には思いやりがあると感じるからでしょうか。

施工する技術は専門家さんにお任せするにしても
それを支持したり共感したりする価値観がないと
研究者や専門家の方がどんなに努力されても
なかなか世に広まるのは難しいと思いますので
そういう価値観づくりに役立ちたいという思いもあるのかな。
編集のスキルを使って何か役にたてたらいいのですが。
単純に、「いいよね!」をわかちあいたいだけなのかもしれません。

根本は難しいことではなく
自然を敬い共生してきた
日本人ならきっと共感できることだと思ってます。

そうそう近々
スイスのフォレスターさんや
近自然学の研究者さんが奈良に来られ
フォーラムが開かれるときき、
早速申し込みました。
完全文系のわたしがついていけるかしら?

楽しみです。

※福留修文氏が日本にもたらした近自然工法

(福留先生は2013年12月にお亡くなりになられました。)