金融という仕事

2015年05月22日

プロジェクトXという番組で、金融マンの方が登場されているのを
たまたま見ました。

 

素敵だと思ったので、覚えている範囲でご紹介しますね。
(記憶だよりなので、間違っていることがあるかもしれません。あいまいなことは、あいまいに書きます。ごめんなさい。)

 

お名前を忘れたので、Sさんとします。Sさんの仕事はファンドマネージャー。投資家から資金を募り、それを株で運用して利益を出し、投資家の資産を増やすのが仕事。株を扱う会社は厳選し、社会的に益のあるものに限っています。そして、もうひとつの仕事はこれから説明しますね。
 
Sさんは、実家が畳屋さんでしたが、中学生くらいのころお父さんが体を壊してしまい、金銭的にとても厳しい状態になりました。アルバイトをしながら高校へ通い、夜間の大学へ進学。「お金さえあれば、こんな苦労はしなくてすんだのに・・・」という悔しさから、お金を稼ぎたいと思い、給料が高い銀行へ就職しました。
 
そこで出合ったのが、高度な数学を駆使した金融の技術。猛勉強してそれをマスターし、外資系の有名な金融機関へ天職してアメリカへ。そこでは10兆円のお金を動かすプロジェクトに携わりました。10兆円とは、中規模な国の予算にあたる額だそうです。(日本は90兆円とか聞きますから、やっぱり日本て大きいんですね)やりがいがあるはずでしたが、プレッシャーはとてつもないものになりました。コンピューター上で、ほんのわずかなミスがあっても、数億円が瞬間的に飛んでしまう。「絶対にまちがえてはいけない」という追いつめられた精神状態が続くなか、体を壊しました。

 

そのころ出合ったのが、『日本でいちばん大切にしたい会社』

 

この本には、障害者を積極的に雇用する日本理化学工業(株)が登場するため、夫の仕事がら、発売当時わが家でも大変話題になり、わたしも読んでいましたから、Sさんがこの本に打たれたことは想像できます。「それまで自分がいた世界とは全く違うものだった」とSさんはそのときの衝撃を語っていました。

(余談ですけど、本の力ってやっぱりすごいですよね・・・。すばらしいです。)

そのあと、鎌倉で仲間を募って古民家を拠点にスタートしたのが今の会社です。「ほんとうに支援したい会社を融資で応援する」ためでした。ファンドマネージメントの仕事から出た利益で、大切にしたい会社に低利で融資するのです。Sさんは、「これがほんとうの金融の仕事だと思います」と、おだやかに語ります。

たとえば・・・

今治市で自然素材の綿からタオルを作るメーカー。10億円の負債を抱えて倒産しそうになっていました。そこに8000万円を調達して危機から救いました。

 

あるは、林業再生にとりくむ会社。(これが西粟倉だったのかな・・・番組ではよくわかりませんでしたが)

 

融資するにあたっては、Sさんはその会社の業務を調べるだけでなく、若い従業員の方と話をされます。「自分の会社に誇りを持っているか」を知るためです。そんな会社は投資しても大丈夫なのだそうです。

融資をしない決断をする場合もありです。そこにもSさんのポリシーが現れていると思いました。つまり、「リターンがないからだめ」というより「その会社にとってどうなのか」をお考えでした。
 

発展途上国の女性に縫製などの手仕事をしてもらい雑貨を製造、それをフェアトレードで日本の消費者に届ける会社。(あ!と思いました。PEOPLE TREE だったから。わたしとものすごく古い友人の方はご存知かと思いますが、奈良の今はなき(笑)マーチャンシードセンターというところで、手弁当でPEOPLE TREE の服をお借りして、ファッションショーをしたことがありました。フェアトレードというものがあるということを奈良の人にも知ってほしかったのでした。あれからこの会社、どんどん大きくなっていかれたようでした。)
 

Sさんは、「もっとたくさん仕事を与えたいのです」と言うその会社の代表の方と話をされます。
 

そのとき、Sさんが気になったことは、この会社が「前払い」で仕事を依頼していたこと。事業が大きくなればなるほど、前払いの金額は膨らみ、苦しくなってしまうと考えました。融資してしまうと、低利とはいえ支払う金利が増えてしまう。それがこの会社を苦しめることになるのではないか。ほんとうに融資していいのか。
 

そして、社員の給料についても、「志があり、やりがいを持って働いておられるのがよくわかるけれども、このままではいつか疲弊してしまうと思う」とのことでした。

 

その結果、今のところは融資はしないことになりました。代表の方は一瞬ぼう然とされていました。でも理由を聞いて、納得されたように微笑まれました。Sさんは、単純にお金を工面するという応援ではなく、取引先が増えるようにコラボできる企業を紹介するなど、事業を安定させるための応援をすることにしました。

この会社がもっと利益を出し、給料も増え、前払いしても苦しくならない仕組みを作れたときに、Sさんは融資されるかもしれないなあと思います。

 

とてつもなく優秀な人、というのがいらっしゃいます。
Sさんもそうかもしれません。そういう人が、こんなふうに魂を売らずに仕事についてくださることが嬉しいです。

 

また、ある研究によると人間は他人のためにお金を使うほうが満足感が高いという結果もあるそうです。
善意から行動し、それが受け入れられ、喜ばれたときほど、豐かさを感じることはありません。わたしたちのなかにある「性善」の部分をのびのびと行かすことで、わたしたち自身が幸せになれるはずなのです。
 
番組の中で、投資家のみなさんにSさんが説明会をされた直後のシーンがありました。投資家のみなさんは、特別なお金持ちの人々のようには見えませんでした。かといって、投資されるくらいですから、ある程度の余裕のある方々であると思います。
そんなみなさんの表情が生き生きと輝いていました。なぜなら。

 

「Sさんのお話を聞いて、こういうことのために投資するなら、すばらしいと思った」
「特別なお金持ちではないけど、投資を通じて社会貢献ができるの嬉しい」

 

こういうお金の循環って、素敵だと思いませんか?

 

Sさんが体を壊されたように、道を間違えそうになったときや、休むべきときに
体が教えてくれることがありますよね。体が壊れなかったら、Sさんは今でも10兆円のファンドマネージメントをされていたでしょう。健康をとりもどされ、こうしてご自身もやりがいを感じながらいい会社を伸ばす仕事をされていて、ほんとうにヨカッタですね。

 

わたし個人は融資を受けるような事業には縁がないと思いますけれども、
Sさんが応援されるような会社の商品を買う消費者になることはできるかな。
いつか投資する側になれたら、素敵だなー。

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