ビジョンを作るしごと

2014年12月15日

半農半Xって、知っる? と最初に教えてくれたのは、
ときどき事務所を訪ねてくれるお友だちでした。
その友人は奈良県立情報図書館に塩見直毅さんが来られる、と
言ってたように思います。(何年前だったかしら)

まるですでに知っている言葉であるかのように
「知らなかったけど、わかるわ」と応えました。
農業の大切さは、環境について関心のある人なら
誰だって思うこと。でも就農はハードルがあること。

そこを「半農」という言葉で表現してくれたら
たちまち可能性が見えてくるような気がしました。

わたしは人生の理想のかたちとして「晴耕雨読」という言葉に
ヒントがあるような気がしておりました。
昔から、作家をされている方の中には、
日本の山奥に住み、自給自足的な営みと
著作物による印税収入で暮らす人がいましたが、
才能のある人しか難しいと思っていました。

それを「半X」と言う言葉で考えれば
特別な才能に限らず
誰でもがその人らしく持っているもので
その人らしい半Xも作る道もあるのでは、と希望が持てます。
しかしながら、講演を聞いたことはなく(^^)

やっとこのたび直接聞けましたので
自分へのメモのために、書いておこうという次第です。
多くの方にとっては、すでにご存知のことばかりかもしれません。
何もかもを勝手に書いていいのかどうかわかりませんので、
自分が感じたことをまとめるかたちにしたいと思います。

今回のテーマは
「感性を鍛え、多様な地域資源とエックスを活かし、新しく組み合わせ、情報発信する!」

塩見さんは、スクリーンに次々と言葉を映しだしながら
話してくれます。
ご自身については、25項目の短い言葉で、説明されました。
手元の資料には、5×5マスの表にまとめてあります。
 「2003年、ソニー・マガジンズから出たデビュー本『半農半Xという生き方』(2008年に親書化)が、
2014年10月、ちくま文庫になり全国発売!
お住まいの綾部についても
アルファベットの A から Z まで
それを頭文字にする言葉で紹介されていました。
 A 「合気道」発祥地
一家で綾部に移住した武道家・植芝盛平翁は当地で合気道の型を発見しました。市内には合気道を行う中学校もあります。

そして、参加者にむけても、ワークシートが用意されていました。
「自分とまちの“エックス”をデザインする」
やはりタイル状に並べてあり、8項目

 人生で叶えたいことは何ですか?「〜プロジェクト」という形で8つあげてください

このシートに取り組むには、スイスイとアンケートに答えるようにはいきません。
わたしの場合は、自分の中にたくさんあり、散らばっているものの中から
何を選ぶのか、に時間がかかりそうです。その選択が、「認識」したり「定義」したりする助けになりそうです。
そして、いつかはそれが変化するかもしれないとも思います。

塩見さんの話は、気づきのきっかけが集まったものでした。
何かひとつの結論に向かって、全員をそこへ押し込めるというのではく、
一人一人の中にあるヒントに本人が気づけるように、
たくさんのキーワードで刺激してくれます。
基本にあるのは、塩見さんのもともとの問題意識である「環境」です。

どんなに景気がよくなったとしても
あいかわらず自然を破壊して経済的に価値のあるものに変え、
失われたものに見向きもしない…ということだったとしたら
わたしたちはもう幸福になれません。

すでにある自然、すでにある町や村、すでにある自分の価値に気づき、
それをどう組み合わせるかが大事なのですね…。
 

すでにあるものを組み合わせる、というのは、つまらないことではありません。
逆にいえば、この世はすでにあるものの集合体にすぎません。
当日のレジメにも描いてありましたが
「アイディアとは既存の要素の新しい組み合わせ意外の何ものでもない」
という言葉があります。
わたしも、仕事関係の方から教わったことがあります。
 

なんだか、まったくの無から何かを作らなければならないと考えてしまえば
神様か天才でもない限り不可能なことのように思えませんか?
でも、天才たちも、「アイディア」を作っているのであり、
アイディアは「既存」からしか生まれないというわけです。
で、あるなら、やはりその既存から何を見つけるか、何に気づくかによって
「新しい組み合わせ」は生まれるのでしょう。
ある人にとっては退屈で何の可能性も感じられない「既存」。
ある人にとっては、それと同じものが「宝物」。
フレッシュでポジティブなまなざしと、人や生き物の幸福を望む心を
持ち続けたいと思います。
いくつになっても感性を磨くことは、楽しくて、大切なことですね。

 
 

資料のまとめの中に「情報発信はかなり大事なキーワード!」とありました。
わたしの仕事も情報発信にかかわるもの。
質のいい情報を発信する、そのための探求を重ねることも
自分のエックスなのかな。

 
 
講演をふりかえりつつ、
塩見さんが、こうしたキーワードや、ワークシートを作成されるまでについてを思いました。
塩見さんの中で生まれたものが他の人とシェアしたり、活用してもらえるようになるまでに
どれだけの考察や試みがあったことでしょう。
ひとつのひらめきや気づきを、そのままにせず、公式化したりキーワード化して、
まわりの人がビジョンを持てるにする塩見さん。
 
なるほど、ビジョンを作るしごとをする人でした。