木もこうやって使ってもらうと、嬉しいのでは・・・。

2016年06月04日

黒滝村というのは、吉野林業地と言われている三つの村(川上村・東吉野村・黒滝村)のうちの一つ。
奈良県の南部のほうにあります。北部の住民には、遊びか仕事か、特別な用事がないとあまり縁のないところかもしれません。
我が家は、子どもたちが幼い頃は、しょっちゅう天川村(黒滝村のさらに南部)へ遊びに行っていたため、当時黒滝村はなじみのコースでした。


最近は自分の活動や仕事を通じて、お知り合いの方が少しずつ、できてきました。
その一つが徳田銘木さん。FBのタイムラインに上がってきたのをきっかけに知りましたが、その時は接点があるはずもなく。
それがいろいろあって、社長にお会いすることがあり「ぜひ一度来てください」とお声かけいただいたのをチャンスとばかりに、
ついにうかがう時がきたのでした。

徳田銘木さんは、磨き丸太(杉や檜-ひのき-の丸太の皮をはぎ,磨いたもので、床柱などに使われます)業の会社ですが、
注目されることが多いのは曲がった木、枝や根の部分も造形として生かしてある木、
色や形のおもしろい木などを扱っておられるところだと思います。

たとえば(ほんの、ほんの一例ですが)こんな。

(ホームページからお借りしました)

徳田銘木さんのご紹介ついては、社長から教えていただいた、こちらのサイトをごらんください。
どのような木を扱っていらっしゃるか、それがどれほどのインパクトか、お分かりいただけると思います。

ここでは、見学させていただいた体験から(公開しないでね、とおっしゃったことはしませんので、社長)
ストックヤードを見て心に残ったことを、伝えられるかどうかわかりませんが、記録しておきたいと思いました。
そのために、当日の様子を少し説明させてください。

まず7分ほど遅刻して到着すると、社長はすでに会社の前のところにお出になっておられ、
駐車スペースを教えてくださいました。それから、事務所を通過し、ストックヤードに入れてくださいました。
平成20年発行のあるフォーラムの報告書にある徳田社長のスピーチよると、
こちらでは年間1万7000本の木が販売され、常に2万本の在庫があるそうです。2万本て。。。

広い・・・。次はここ、次はここ、と案内されても、まだ先がある。まるで博物館のよう。
シンプルな外観からは想像のできない多様な内観です。

室温はさすが山の中、クーラーが効いているのかなと思いましたが、自然乾燥を兼ねているので空調はしていないとのことでした。
わたしたちの下手な写真よりも、さきほどのサイトにあるプロカメラマン撮影の写真のほうがずっと美しいですので、
写真をアップしても意味がないように思います。いえ、もっというと、ウェブを通じてどんなに写真を見ても、
ここで感じた圧倒的な迫力は、来てみなければ、わからないものでした。
「写真で見るのと、全然、違う・・・」
やはり、写真というのは、ページやブラウザーの中におさまるサイズに過ぎません。
ここに来ると、高い天井に届きそうな長い木材がびっしりと並んでいたり、変わった木が山積みになっていたり、
自分は小さな存在としてその足下をうろうろしているだけです。
「磨かれてる」だけあって、ひとつひとつがツヤツヤと輝いています。
これは、伐採する時期(秋)と皮をむく時期(冬)が肝心なのだそうです。
徳田さんのところでは、水力による特製の機械で皮をむくそうで、冬、極寒の黒滝村での仕事ぶりがしのばれます。

 

 

 

まっすぐな丸太も多量にありますが、それ以上かと思われる量で、通常であれば売り物にならないかもしれない変わった木が、磨き丸太と同じようにきちんと皮がむかれ、磨き上げられて出番を待っています。
たとえば、根元が曲がった木。。。斜面に生えてしまったために、光を求めて上に曲がって伸びた木です。
林業では、木の根元と上のほうで直径に差がなく、まっすぐであることが優良です。曲がっているなんて、アウトなはずです。
アウトの木に、活躍の機会を与えまくっていらっしゃるのが徳田銘木さんでした。
苦労して植林、育林された木を、なるべく全て価値のあるものとして販売していきたい。という思いが伝わってくるのです。
そうでなければ、わざわざ、手間ひまをかけて製造し、工夫を凝らして価値を生み出し、
売り込みをして、規格外の木を扱われるでしょうか。徳田さんは、「未来に繋げていくことが仕事」というふうに
先に紹介した動画の中でおっしゃっていますね。繋げていくには、しくみが必要。
それを考えに考え続け、実践し続けてこられたのだと受けとめました。

これも先の報告書からの引用ですが・・・

(仕入れるものとして)間伐材、除伐材、下手したら林業廃材まであるんです。お金を出さないと、継続して出ないんですよ。
・・・お金出して、あいつ買いよるで、といったら出してくれます。そしたら仕入れができる。製造ができる。品質管理、在庫ができる、販売ができると。そのサイクルができると。

木は一生懸命に生きていた。優良な木も、今までの尺度でジャッジするとだめな木だとしても。
そして徳田銘木は、木を一生懸命に売っている。
木の命が(そして木にたずさわった人の命も)最後まで価値を持つように、あたらしい価値を創出しながら。

「ここは、木のストックヤードでもあり、ストックしつつ自然乾燥させておく場所でもあり、
それからもうひとつ、ギャラリーだと思っているんですよ。ですから、なるべくきれいに陳列しようと思ってる」(徳田さん)
ですから、そこは「倉庫」というよりも・・・
わたしの中に浮かんだ言葉は「森」でした。
ひんやりとした肌感覚。陽射しが遮られていて、静かな場所。生命感を放つ高い木に囲まれた場所。
たしかに森の中にいるようでした。

「設計する人やデザインする人は、こちらが思いもつかないような使い方、喜び方をされるんですよ」
徳田銘木博物館の学芸員さん(?)である徳田さんは、タブレットを手に持ち、スワイプしながら施工例の画像を見せてくださいます。

個人的な好みでいうと「わあ、いいなあ」と、特に思うのは、部屋の中に枝がついた木が生えていたり、
壁に細い木が皮つきのまま林のように並んでいたりする使い方。
こうした形で、都市の屋内で、ネイティブな木と同居できるのは幸せなことです。
節も、色の変化も、虫のあとさえ、木が生きてきた証です。
木材となった後も、生きてきた物語を伝え、わたしたちを無意識下で元気づけてくれるかのようです。
それを上手く、美しくアレンジするのはセンス。
品物だけでなく、センスがないと・・・あたらしい価値は作っていけないのですね。

「木もこうやって使ってもらうと、嬉しいのではないかしら」と、
丸太や変木たちを見せていただいて、思いました。
優等生もかっこいいけれど、規格からはずれた変な(個性的な)木までかっこいい。
それをわからせてくださる徳田銘木さんでした。

その昔、千利休は優れたセンスで、茶室の中で木を用いることを流行させたそうですし、
明治には土倉庄三郎が東京で行われた勧業博覧会で膨大な吉野材を出品したそうですね。
吉野材の名声は、誰かがどこかで需要や市場を創造してきたことの積み重ね。。。
徳田さんも、上記のようにあたらしい木の活用の道を拓いたり、、、東京の展示会で斬新なブース展開をされたり、、、
なんとなくですが、、、重なって感じられたことも、付記したくなりました。

 

最後に、「この文章はきっと、社長ご自身がお書きになっている・・・」と感じられる
「徳田銘木に遊びにいこう」という部分を、同社ホームページからご紹介します。

http://www.tokudameiboku.jp/about/on-site-inspection

わたしたちのような見学者(取引でない者)に対しても、本音で、本物の対応をしてくださり
心が見透かされるような瞬間もある、楽しく有意義な見学でした。
徳田銘木さんの取り組みに興味のある方、また、お仕事で、素敵な木の使い方、いかし方をされる方に
ぜひ、見学をおすすめしたいと思います。

PS  徳田さんの山もご案内いただきました。そこでも徳田さんの、先人の努力への思いの一端に触れました。