土には匂いがありました。

2017年05月02日


リビングソイル研究所の西山雄太さんのお話をうかがってきました。

こんなイベント
https://www.morinonakamasalon.com/blank-2

【蛇足】
主催の谷林業さんは、14代目の茂則さんに「さとびごころ」で連載していただいてます。
もう一人の主催の三浦豊さんは、昨年12月に「森の話」のイベントをさせていただきました。
こういうつながりの中に自分もいられているという幸せ。。。。

忘れないうちに、支離滅裂になるかもしれませんが
記録しておきます。記憶をたよりに、少し言葉を補足してメモしているので
よもやま話としてお読みください(^^)
正しくは、西山さんの講座などにご参加を。

土には匂いがあるというお話から始まりました。
その時みんながいた場所は
集合場所となったのは、造成されて平地となった駐車場。
西山さんがスコップで軽く土をすくい、
「匂ってみてください」。
参加者が匂いを嗅ぎます。
特にこれといった匂いは感じませんでした。

いい土と、そうでない土の違いは、微生物がたくさん棲んでいるかどうかです。
微生物が多い土は、それとわかる匂いがあります。
では、森の中に入って、そこの土を匂ってみましょう。
キノコがはえている土は、ほんのりキノコの匂いがしますよ

微生物のたべものは、落ち葉などの有機物です。
それと酸素。微生物には好気性(酸素を好む)と嫌気性(酸素を嫌う)がありまして
好気性の微生物が多いことがポイント。
水が多いところ、土の深いところには酸素がないので
好気性の微生物は棲めません

日本では、ほうっておくだけで雑草が生えるし、
農業をやっている人は雑草を刈る作業が大変です。
雑草は日陰では育たないので、
刈った雑草を根元に敷くと、芽が出にくくなるそうです。

街路樹の話も出ました。

街路樹の落ち葉(剪定した枝もですが)全部ゴミ扱いです。
落ち葉は微生物の食べ物ですから
堆肥化すれば土に還るもの。
集めておくだけで、堆肥化します。
土から生まれたものは土に還したらいいのではないかと僕は思います。
ゴミも減るし、土も豊かになりますから。
地域に一人くらい、土のことがよくわかっている人がいたら
その人を中心に地域で落ち葉を堆肥化するようになるといいですね。
みんな、よくわからないから、ゴミにするしか方法がないと思っていると思う。

土は買うもの?

よく園芸店で野菜や花の土を売っていますよね。
あれは、バークといって木の皮を原料にしています。
木の皮は、いちばん堆肥化しずらい部分なんです。
それを、焼いて黒くしてムリヤリ土っぽくして
そこに肥料を加えて売っているものです。
ですから、買ってきた土は1年目は植物がよく育つけど
2年目からは養分がなくなって、うまくいかなくなる。
すると、また土を買う。
古い土の処理に困る。
そんなふうにしなくても、土に微生物がたくさん棲めるようにすれば
土はいつまでも生きていられます。

わたくしにも経験があります。
ベランダ園芸がうまくいかなくて、造園業をされている方に相談したとき
「毎年土を買い替えるのがポイントです」と教えていただきました。
なんとなく腑に落ちなくて、
毎年買い替えたりはしていませんが、なぜか、まあまあ育ってくれています。
米のとぎ汁を時々かけるくらいなんですが、、、、。
植木鉢の中に微生物くんが暮らしてくれているのかしら。

駐車場から、元は薪炭林だったという森の中へ。
作業道が敷かれているので、楽に山に登ることができます。
(作業道の話は、長くなるので今日はカット)

途中で、松の木がありました。

松は痩せた場所が好きです。だからマツタケを栽培する人は
落ち葉などを掃除しますね。
マツタケと松は共生関係にあります。
マツタケの菌は、松の根について、松の根よりも100倍近く長く根を伸ばします。
松が自分では届かないところまで、伸びる。
そこでマツタケは、リンや亜鉛などの溶けにくいものを溶かして
松に送ります。
松は糖分(光合成をするとデンブンができる実験を思い出す)をマツタケに送ります。

低い山なのですぐに頂上へ。
ここは3年前からチャイムの鳴る森というイベントが行われていて
それまで忘れられたいた森が人々の集う場所になってきました。
とても居心地のいい、わたくしも好きな場所です。

西山さん

西山さん。隣は三浦さん(撮る瞬間に横をむいちゃった)。

西山さんは、1本の木の下で止まりました。
空高く育った木は、根元が土から隆起しています。
あたりに落ち葉はあまり多くありません。
人がよく通る場所なので、自然に落ち葉が周辺に追いやられるのでしょうか。

西山さんは雨の水滴の話をされました。

雨の水滴が土を流す

土にとって、雨の水滴はよくないものなのです。
雨って、なんてことはないように思うかもしれませんけど、
葉っぱから落ちる水滴が地面に直撃すると、土を流します。
それがくりかえされて、根元の土が流されてしまう。

もうひとつは、人が踏みしめるなどして
土が堅くなってしまうこと。
根は、固まった土を押しのけることはせず、
固いところをよけて伸びようとします。
植物も微生物も、酸素が必要。
踏みしめた土では根が酸素を求めて隆起してくるんです。
街路樹で土が地面を押しあげてきているところがあるでしょう。
あれは、元気いっぱいなのではなくて、
下に延びるべき根が酸素を求めて隆起しているところです。

落ち葉があると、クッションになって水滴から土を守ります。

踏み固められた土。鉄分の含む部分が還元されて黒くなっているのだそう。

人を排除しない森

だからってね、柵を作って立ち入り禁止の場所がどんどん増えても
楽しくないですよね。
ですから、人が歩いてもいい場所を作って、自然に誘導するように
工夫するといいと思います。
庭石も、そのためのものなんです。
枕木を置くのも、人が踏みしめる衝撃を広げて和らげるためのものです。

微生物の棲む土

西山さんは、落ち葉が多く、あまり人が歩かないところへ入って
スコップで土をすくってきました。
これを匂ってみると、、、大げさな言い方をすると
おいしそうな匂いがしました。
微生物がたくさん棲む。土が発酵している?おいしそう? ???

わたしは、若いころ、キャンプをよくしましたが、
(夫のおかげさまさまで)
朝、テントを開けたときに土から立ち上る匂いがとても好きでした。
街には、そういう自然の土のかおりはどこにもないわけですが
街の中にも 微生物の棲む土のある場所が
もっと増えるといいなあと思いました。

土のグラデーション

また、西山さんは微生物が棲む土の層が、表面の薄いところに留まることを
土を掘って教えてくれました。

土のグラデーション

茶色い部分が表土。下のほうが赤いのは、土の鉄分によるもの。空気が届かないので微生物はいません。

土は自分で作れる

土の条件としては、
1.水や空気などの物理的条件
2.微生物などの生物敵条件
3.栄養分などの化学的条件
この三つがからむんですけど、一番大きいのは 水と空気です。
みなさん、栄養分のほうが大事だと思う人が多いです。
実は、化学肥料が多いとか栄養分が少ないとかいうことより
水と空気を通してやることがいちばん大事なことなんですよ。
この三つのことがわかると、土は自分で作れるんです。
落ち葉堆肥は、季節をとわず、年中とりかかることができ、1年くらいで変化が出ます。

世界には、土を作るビッグビジネスはないんです。
モン●ントとか、敵にまわすわけじゃない。
みんなで、自分たちで、できること。やればいいじゃないですか!

よくオススメするのは、
ワイヤーメッシュというもので囲ったとろに
落ち葉を集めてギューギューと押し込めて溜めていく方法。
2〜3ヶ月で、微生物が活動を始めて発酵熱がでてきます。
菌も、ここはいいぞー、集まれーっていうふうに増えてきて、
促進されるんです。
でも、詰め過ぎたり水が溜まると、嫌気性の菌が増えますから注意。
嫌気性菌からはメタンガスが出て、場合によっては発火のおそれもあります。

(薪ストーブの灰は畑に蒔いたらいいかしら、という質問に)そんなにまく必要はないと思いますよ。
日本の土のpHは5〜8。4になると酸性で、アルミなどの有害なものが溶けます。
灰はアルカリなので、土を中和します。
でも、そんなにたくさんは必要ではないので、
山などの広いところに薄くまいて還すのがいいと思います。

ひととおりの講義が終わったタイミングで
おまけのお話も出ました。

日常を楽しむ

僕の姉のだんなさんがオーストラリア人で、
むこうに遊びにいったとき、奥さんが家の中で用事をしている間、
旦那さんは庭で テーブルを出してビールを飲んだり本を読んだりして
日常を楽しんでいるんです。
その合間に、庭をいじったりして。そこが男の居場所になってる。
男の居場所を外に求めたら、それが農への入り口になるかもしれない。
日常を楽しむ、っていうのが僕が考える豊かさです。
「何が豊かさなのか」は、人によって考えがあると思うけど
僕の場合はそういうのが豊かだなっと思って。

里山の経済価値

里山の土をいい状態にするっていうことと
経済価値は直接結びつかないかもしれないけど
ここにある在来種を苗にして販売したらいいと思います。
今人気があるのは、ほとんどが外来種(例 オリーブとか)ですけど、
その地域に本来生えるような木を飾ったらいいんじゃないかと思いますね。

ああ、これは。わたしもオリーブは大好き。
なんとなく、おしゃれなお店でよく見かけるせいもあるのかもしれません。
たしかにそれもいいけれど、むしろ地域の山林に本来自生するような木の苗を
ベランダに並べることができたら、、、、とっても素敵。
そこは、わたしの小さな森になるってわけですね。(拡大解釈はなはだしい?)

ゴールデンウイークのさなか、わたしは土があると
手で掘ってすくって匂う人になってしまいました。

花壇、田んぼ、畑、森、、、、それぞれ
どんなふうに違うかしら。今まで比べてみようと思ったことはありませんでした。
これからは興味が湧きます。。。(きき酒ならぬ、きき土とかできちゃったら、面白い!無理か・・・)
目に見えない微生物たちと、いっしょに生きているわたしたち。
お酒も味噌も、日本食にかかせない多様な食べものは、微生物なしには生まれませんよね。
微生物の働き次第で、腐りもするし発酵もする。
上手に生かせば、ギャラの請求もなく、仕事をしてくれるとも言えます。
その微生物がたくさん棲んでいるのが土です。
土は汚いですか?
土はなくてもいいものですか?
土があれば、有機質のものであれば
(それが少々のごみだったとしても)微生物が分解してくれる。
昔のゴミは有機物ばかりだったのと、
暮らしの周辺に土がたくさんあったから
ゴミは「いつのまにか消えてなくなるもの」だったことでしょう。
もっともっと、土との距離を縮め、仲よくなりたい!と思いました。