近自然の森と奈良

2018年07月26日


近自然の森と奈良

昨年12月に奈良で行われた講演会の記録をもとに、冊子を作りました。

近自然のコンセプトは、エルインクが尊重するところでありまして、もともとは自分のまわりの人に知ってもらおうと、著者の佐藤浩行氏と、講演会の主催者である奈良県森林総合監理士会さんにご了承を得て作成したものです。ありがたいことに、双方から「テキストに使うよー」と言っていただいたり、クチコミ(ネットコミ?)で欲しいと言っていただき、100冊近くが旅立つことになりました。

近自然の森づくりとは、一言でいうと、環境と経済を両立させる森林管理の方法です。佐藤さんは、株式会社総合農林代表取締役社長であり、特定非営利団体近自然森づくりの理事。
もともとは、「森林の資産価値をあげる」という仕事上のミッションを果たすために研究していたなかで、スイス林業に出会い、近自然の森づくりを知りました。「これを目指したい」と直感してからは、日本での近自然森づくりの普及に尽力されています。

その理論と、具体的な方法、そして奈良で行うにはどうしたらいいのかを4つにまとめてくださいました。

読まれる人は、林業関係者がほとんどなのですが、近自然の森はエコロジーなので林業関係でない人にも知ってもらえたらと思います。

吉野林業はスギ、ヒノキを中心として栄えてきたので、多様な森を目指す近自然とは相容れないと考える人もいるかもしれません。
しかし、自然の恵みを持続可能な状態で享受し続ける方法、という意味では共通するところもあると思います。

どちらにしても、森林が見捨てられてしまっては、健全さを取り戻すには100年も500年もかかってしまいます。日本の森はほとんどが、人間が介入して成り立ってきました。介入したからには、守り続けないと調和が崩れてしまう。経済面だけではかたづかない問題が生まれています。近自然森づくりは全国的に試みが始まっていますが、まだ一部に留まっていますし、近自然森づくりだけが唯一の答えではないかもしれません(スギヒノキ林が健全に運営されるなど)。それを含みながらも、経済と環境を両立する林業であるとすれば、エルインクは関心を寄せ続けていきたいと思います。

林学の著名な先生方は、森が滅びた文明は滅びることを著述されています。日本の森は、今まで見捨てられたことがありませんでした。いつも生活や命とかかわっていたからです。戦後衰退し、なんとかしなければという機運が生まれ、そして今度は国の方針が「伐れば伐るほどよい」という方向へむかいつつあります。(これは地域での管理の仕方や計画次第と言われています)

仕事?といえるかどうか、わかりませんが(全く儲かっていないので)、自分の役割かなと思って、「森のこと知ってほしいいなあ」と、そんな気持ちで作りました。