スイス上級フォレスターとの QandA

2016年02月17日

スイス森林管理有識者交流会
オープニングフォーラム より・・・

恒続林へ移行するまでの間はどうしたらいいですか

スイスの森は美しいですが、美しさのために生まれたのではなく、経済的にたてなおすために生まれたものです。最初から恒続林を求めたのではなくて、求めざるを得なかったのです。美と経済は両立するのです。まずは、皆伐をやめ、自然にかませられるところはまかせて移行していきます。
スイスでは、大きなハリケーンの後、しばらく様子を見ていると自然が自ら回復できることがわかりました。あれいいね!っていうところから(始まりました)。まずは、大きく一気に変えようとしないで、まず一つやってみることです。そこには失敗もありえます。いろいろ試し、そこから学んで広げるパイロットプロジェクト方式をオススメします。その際に研究者をまきこみ、次へのベースにしていくことです。

中欧意外の国では近自然森づくりをあまりやっていないのでは?それはなぜですか?

ひとつめとして、林業関係者がまだ「なんとかいけている」と考えており、本当に変わらなければと思っていないのではないでしょうか。
二つめに、農業のように林業を考える、という習慣がついてしまって、頭の切り替えができない。三つめは、ブレンダーワルトは、もともと農家が幾世代にわたっても森を使いたいよね、というところから生まれたものに対して、あとから研究者が理論づけたものです(これが質問の答えになっているか筆者、少しわかりませんでした)四つめとして、他の国も、もう始めている。全世界的に恒続林を目指しており、スイスからアドバイザーが派遣されているが、(何十年もの)時間がかかることなので、見えてきていないのです。

吉野林業はスギ・ヒノキが中心です。恒続林化は難しいのでは?針広混交林にした後、スギ・ヒノキを伐ると、もう生えてこないのでは?どう思いますか。

(訳者の山脇氏より・・・吉野の適地適木については、スイスのフォレスターは知らないので、その前提でお願いします)
1850年から1900年、スイスも似ていました。トウヒの森でした。どうしたらいいか、わからなかったのですが、「やってみることにした」のです。狭いところでいろいろと、何もしない、ギャップ(木と木の間隔)を広くする、狭くする、キャップに植えてみるなど・・・。山主の中には、針葉樹も生えて欲しいと望む人もいます。そこを調整しつつ、投資も少なく、どうしたらいいかやってみる。これを吉野でもできるのではないでしょうか。
そのとき、研究者を入れてしっかりとしたデータを取ることです。

前提として「住民が恒続林を望む」ということがない。ここをどうしたらいいですか

スイス人はゲルマン民族。森への関心が高いです。日本人も森が好きかもしれませんね。求めていないのは、知らないからかもしれませんよ。福島の(原発事故の)後、スイスでは原発を作らないと決めました。それが森への意識を一気に膨らませ、エネルギーとしてもブームになりました。持続的な森(の必要性?正しさ?)は、林学的にすでに明確です。パイロットプロジェクトの前に、住民に対して伝える努力が欠けているのではないでしょうか。スイスは大キャンペーンをやってきました。

(訳者より補足・・・日本でも木質バイオマスブームが起きていますが、同時にネガティブな意見もあり、コンセンサスに欠けるところがスイスとの違いであると感じます)

放っておくと竹が生えてきます。適地適木(でないのか)スギ・ヒノキは広がりません。竹を使えないでしょうか

スイスに竹はありませんが、利用例はあります。チップ、プレスして断熱材として優れているそうです。経済的に合うかは、わかりません。

所有者の権利に関わることです。恒続林を望んでいた人が、あとから皆伐を望んだ場合にどうなるか、それに備えて、最初の意思をどう保てばいいでしょうか

まず、森林法で、林業は所有者の自由にしてよいと保障されています。州に何ができるかというと、違法は止められる、ということです。
1.皆伐は禁止されている 2.高い公益性については所有者の望みと違っても命令できる 3.州が投資して、専門家の教育をする。フォレスターを派遣し所有者にアドバイスを行う。4.林業は経済的にペイしないとだめです。次世代に若って儲かり続けるためには、皆伐、植林、手入れは経済的に成立しない。強制はできないが、導くことはできる。5.法律の範囲内なら、所有者の自由。「でも危ないですよ」と、アドバイスはできる。恒続林にするという誓約書をかわして縛る、というより、納得してもらうようアドバイザーを送るのがいいと思います。

太い木から伐るとのことですが、出しづらくないですか

ギャップを空け過ぎないこと。うまく調整すると可能です。フォレスターは、そこのコントロールができないとダメです。奈良は、実験の段階だと思います。

日本で天然下種更新ができますか

どんな条件でできるか、研究者が研究すべきです

スイスで若者が林業を志す理由はなんですか

若者には未来があり、ネットにより知識もあります。これからどうなるか、多くの若者たちが心配しています。森はエコに貢献し、自然に貢献し、安全にも貢献します。そこのことは日本でも知られているはずです。スイスでは、ネットだけではなく、教育システムに組み込まれ、子どもが森好きになり、働きたくなるようになっています。後継者問題は、スイスにはありません。
オフィスが好きな人もいますが、森で働きたい人は必ずいて、充分な人が入ってきます。

マルティさんご自身は、なぜフォレスターになられたのですか

私の親は農家でした。自然や動物が大好きでした。ベルン州では、末っ子が跡継ぎになることになっており、わたしは次男でしたので、農学、林学、または獣医になりたいと思っていました。家の近くで、夕方になると、毎日必ず散歩をしている人がいました。その人はフォレスター学校の校長先生でした。その人にある日、「ちゃんと勉強したら、校長にしてあげるよ」といわれ、その通りにしました。今63歳、とてもハッピーです。この道を選んだことは、まちがいじゃなかった。

奈良の林業の未来についてヒトコトを

次世代のために勇気をもってトライしてください。それが今のみなさんの幸せに繋がると思います。

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