好きになってしまった草マルチ。

2021年07月31日


最近はすっかり畑ブログになってしまっている。
仕事、雑誌づくり、どれも大切だが、畑があるから力が湧いてくるように感じる。
何もかも忘れて、夏の夜明けの穏やかな明るさの中で、草を刈ったり水やりしたり、ちょうどいいサイズになった野菜を収穫する。
日差しが強くなるころには帰ってくる。そして1日が始まる。
もう畑のない暮らしは考えられない。

 

今日、畝のすべてに草マルチすることを完了した。
 

以前から持っていた畑のイメージは、ほくほくした土の畝の上に
お行儀よく野菜が並んでいるというもの。
雑草がひとつもないのは、よく手入れしてあるという野菜への愛情の証。

 

それは、実際に畑をしていない自分が持っていたイメージだ。
(ほくほくした土は正解だが、有機肥料に依存した土かもしれない)

 

やってみると、黒いビニールマルチ問題に遭遇した。

草が生えにくいように、あらかじめ畝に黒いビニールマルチを敷く。
風で飛ばないように、ストッパーになるものを挿して固定する。
ビニールマルチに、丸く穴をあけて、そこにタネや苗を植える。

以前、そう教わっていた。畑はみんな、そんなふうになっている。
でも、ビニールマルチはゴミになる。
片付けるつもりなのかもしれなくても、農地に置き捨てられているマルチは見苦しい。
プラゴミにもなる。

 

「昔は草マルチをしたが、今はそんなことをする人はいないよ」
「稲わらマルチをする方法もあるけど、手に入れるのが面倒でしょう」

 

そんな言葉も思い出される。

 

けれど、この夏、草マルチを選んだ。
「たくさん生えてくる雑草を刈る」という手間をかけることで
草はいくらでも手に入った。
昨日書いたように、刈った草は畝に載せるを繰り返すことで
土がよくなることも理解した。
草マルチは、ただの雑草予防ではなく、もっとポジティブな理由があるのだ。

 

だったら、全部敷いてみよう。
益になっても、ならなくても、毒だけにはならない。
与えすぎてどうなるという心配もない。

 
畑の周辺の通路には、おびただしく雑草が生えていた。
刈り払い機で夫が草を刈る。
刈った草を集めて空いている畝に貯めていき、少し乾いたところで
栽培中の野菜の畝に敷いていった。
生のまま敷くと、地下茎で増えていく草も含まれるので
それを畝に戻したらそのまま根付いてしまうかもしれない。
だから、軽く乾かして、茶色くなったところで敷いていく。

 
数日前に敷いたところには、早速
マルチの隙間から雑草が伸びていた。

草マルチという日陰の中で頑張って出てきたわけだが、
ひょろひょろしているので抜くのは簡単。
根がゆるくはっているため、土を崩すこともない。
一度マルチしてしまえば、この簡単な手入れだけですむ。
抜き取った草は、(土の上の置かず)マルチの上に置いておけば再び根付くことはない。
除草と土作りを兼ねているどころか、除草すればするほど土にもいい。
このしくみが、大好きだ。
雑草くん、悪いが、ここでは死んでもらう。
畝でなければ、またいくらでも生えてくれていいよ。

 

草堆肥づくりと、刈った草の一時保管場所を兼ねているところは雨ざらし。
空気を含ませるために混ぜたほうがいいのか。
混ぜないほうがいいのか。
よくわからないが、混ぜてみた。
草の上下をひっくりかえす。
そこに見たものは? 
これ、もしかしたら噂の糸状菌????

草の下のほう、しっとりしている部分に、白い粉のような繊維のようなものができている。
たぶん、これがそうなのかもしれない。
ということは、腐敗は免れているということか。だったら、良かった!
このまま、草を載せていき、秋になったら何か植えてみよう。
それまでは、草マルチ貯蔵畝になってもらおう。

 
すべての畝(といっても9メートルほどの畝が4列ほど)に草マルチを敷くと、
畝と通路の見分けがつくようになった。
手が施されているという風景に変わった。
土を露出させない畑に一歩近付いたようで嬉しかった。
草マルチの上から、米ぬかを蒔いた。
コンポストの中に米ぬかを入れると分解がよく進み、腐敗臭がしない。
あきらかに菌が元気になるのがわかる。
それと似た状態になってくれますように。
菌を応援するつもりで米ぬかを巻いた。

 
自然農をしている人の言葉を思い出す。

「土が露出していると、その部分が砂漠化していくんです」

おそらく直射日光によって、土の表面の何かが分解されてしまうのだろう。
草マルチは、土を守るふとんのよう。
ゴミになることもなく、役割を終えたら土に還っていく。
マルチの中で、細かい虫がうろうろしている。害虫なのか益虫なのかわからない。
でも、野菜ができてくれさえすれば、わたしは満足だし、

「いろんな生き物がいるほうが、全体は元気なる」

という原則を
この場所で感じられるかどうか、試してみよう。

 

「こんなことしとったらダメだ。このナスは、もうあかんで」と
ばっさりと断定されたナスの苗がある。
背丈ほどに大きくなったが、実りが悪いらしい。

自分たちは、他と比べていないのでわからないが
とにかくダメだしだけははっきりと言われた。
そのナスを、わたしは絶対に守ってみせる。

葉っぱは元気があるとは言いがたく、虫に食べられまくっている。
定植後、腰高くらいまで育った頃には、元気なナスがいくつかできて、
食べ放題の気配がした。でも、今は勢いがない。

菌ちゃん先生の言葉がうかんでくる。

「菌から栄養をもらった野菜は、分子が大きすぎて虫は食べることができない。」

つまり、このナスは菌で育っていない。ということは、元肥と追肥で育ってきたのだ。
虫に食べられた葉っぱがそう言っている。

もう一度、やってみよう。
これから再び、元気になってくれるかもしれないでしょう。
自然菜園の先輩である羽間農園のハマちゃんから先日聞いたばかりの言葉が
浮かんでくる。

「あきらめたらだめですよ、あきらめさえしなければ、どうにかこうにか、育つんですよ。
失敗してもいいんですよ。それが経験になるんだから」

そう、いつも自分に言ってきた言葉。
ハマちゃんの言葉を聞いてお墨付きをもらった気がした。

目の前のナスを見る。
草マルチをしき、ストチュウ液をかけて、数日が過ぎた。
新たな葉っぱが、所々の枝から伸びている。
まだ新しい葉っぱだからかもしれないが、虫に食べられていない。
数日で変化が現れるものなのか、全く自信はなく、
ただの偶然かもしれない。
けれど、ナスからのアンサーのように感じた。
草マルチと菌の力で育ててみよう。
だめでもともと。もう鶏糞は追肥しない。
草マルチは、日々痩せていく。
また追加で敷いていこう。
猛暑はまだまだ続く。
草マルチが強い日差しを和らげてくれるだろう。

 
ほくほくした土は、
草マルチの下で育っていく。
雑草と共存する、一見ごちゃごちゃした畑。
いつかこの畑の土が
森でキャンプした時に感じたように、
いい香りのする土になったらいいな。
日が昇る前の夏の畑活。
草を刈る(わたしは手刈り)のが楽しい。