ペレット in 奈良

2013年09月19日

秋が深まりつつあり、ときどき「寒いな」と感じます。上着を一枚持って、調節しないといけませんね。
つい先日まで猛暑でへとへとになっていたのに、しばらくすれば、暖房が恋しくなる季節がやってきます。
震災以来、暖房はエアコンから灯油に変えてみました。節電のつもりですが、灯油が最善と思っているわけではありません。
いろいろ夢みるエネルギーのひとつに、ペレットがあります。エアコンに比べて、心理的にも温かみがあります。

写真は、さいかい産業HPからお借りしました

ペレットは木を砕いてカプセル状に固めたもの。これを燃料として、ストーブにします。
(大型の設備の場合はボイラーになります)
煙が出ない。廃棄穴が必要なだけで煙突不要。一酸化炭素中毒にならない。薪ほどのスペースがいらない。
一般家庭で使用可能。マンションタイプもぼちぼち登場。
まだ手ごろな価格とはいえない(30〜40万円位)けども、普及すればもっと安くなるかも…。
わたしが知っている(そして応援している)メーカーは新潟県にあるさいかい産業

うっすらご縁があり、社長さんが、一人で立ち上げれたヒストリーから知っているので、
日本でペレットストーブが普及するなら、こんな会社のものが売れて欲しいと思っているメーカーです。

なぜペレットに希望を感じるのかというと、日本なら自給できると思うからでした。
国土の70%が森の国。林業が廃れたと言われ続けていますが、木を燃料に使えば大きな需要になるし、植林すれば持続可能では…。
素人はそんなふうに思いました。奈良県の林業にとって、ペレットって、どうなんだろう?
京都市では、ペレットの導入に助成があるそうですが、奈良県では聞いたことがありません。
奈良県はペレットには関心がないのでしょうか。

と、思っていたら、「御杖村でペレットのプラントが動いている」という情報が入ってきました。
いいめぐりあわせで見学に同行できるということだったので、早速行ってみました。

御杖村へ


しかも、さいかい産業の社長さんが理事長を兼ねていらっしゃる一般社団法人木質ペレット推進協議会の方も
奈良にいらっしゃるタイミングということで、お話も伺えました。

ここで「プラント」と言っているのは、
木材からペレットにまで加工する機械設備のセット、というふうな意味です。

現地で同協議会の阿部さんにお目にかかり、プラントの現場へ案内していただきました。
これは奈良県が御杖村の協力で行っているテスト運転なのだそうです。

小さなおうち2軒分くらいのスペースに、
「1.木材を砕く機械」と「2.砕いたチップをペレットに固める機械」が
並んでいました。ブーーーーンと音がしています。

ブーン。トップが出てくる。


隣の人と話すのがやっと聞こえるかどうか、という音量。
木材は、直径だいたい15センチくらいのものを、だいたい30センチくらいの長さにカットしたもの。
(だいたいです)水分10〜15%程度のものが望ましいそうです。

これを機械1に入れると、ささがきごぼうのようになった木材が出てきます。

木材からチップへ

もうひとつの機械2に入れると、さらに砕かれて熱と圧で固められ、ペレットのできあがり。

木質ペレット

と、こう書いてしまえば簡単そうですが、
木材の質(杉が最適らしい)、水分量によって、機械を調整しないと、きちんとしたペレットにはならないそうです。
そこに「慣れ」が必要とのこと。機械を動かしていらしたのは、奈良県農林部の方、Nさんでした。
奈良県のHPに、こんなページがあるではありませんか。
→ 木質バイオマス

奈良県は、県土の約77%が森林で覆われ、吉野林業地域を中心とする全国有数の林業県であります。また、木材加工業についても桜井市、吉野町等に木材団地が形成されており、木質のバイオマス資源が豊富に存在しています。
 本県では、県内に豊富に存在している木質バイオマスを対象とし、資源量や調達コスト等について調査を実施し、地域特性を踏まえた木質バイオマスのエネルギー利用のあり方や、事業化に向けた方策等を検討するため、平成15年度に「奈良県木質バイオマス資源利用可能性調査事業」を実施しました。

ずいぶん以前から調査は始まっていたのですね。(わたしがさいかい産業を知るより以前かも)

以下は、お話を伺ったことを自分のためのメモとして書き、みなさんにシェアしますが
間違っていることがあるかもしれませんので、あとから気づくことがあれば随時修正していきます。

このテスト運転は今年8月5日に始まり、3ヶ月間行われるとのこと。200トンのペレットができるとか。
でき上がったペレットは、県内の施設などで20台程度のストーブをテスト導入して使うことになっています。
ペレット製造過程では、木の含水率を測り、何度の温度で処理すると含水率は何%になるか、さまざまなテストを繰り返し
データをとり、適切な加減を見つけていくのだそうです。また、事業化のためのコスト計算もし、
どんな規模で、どれくらい作って、どれくらい売れれば採算が合うのか、利益が出そうかという調査もしているそうです。

プラントは最も小規模なタイプのもので、価格は3000万くらい。
テスト運転期間中、推進協会からのレンタル(?)だったかな?(要確認)
テスト期間が終われば、一旦、返却されます。

そして、その後はどうなるの?

奈良県は、こうした調査を公開し、民間から手を挙げるところがあれば
協力していきたいとのことでした。

この日わたしが気づいたことは、
誇り高い吉野林業界の人たちにとって、大切に育てた木がペレットになってしまうことは
かならずしも喜ばしくはない、ということでした。

吉野杉は高級木材として高く売るもの。

ペレットになっていいのは、売り物にふさわしくない部分のみ。
それを手間ひまかけて仕分けてまで原料として出すことに、モチベーションは湧かないということ。
間伐材はどうか?運び出すコストがネックになることも変わりありません。

奈良県は77.7%が森だからといって
ペレットの原料が簡単に大量に得られるか?といえば、
そんなに単純なことではないということ。

ここが勉強になりました。

さいかい産業のふるさと、新潟県の例では、
都市の公園の木を剪定した際に生まれる木を使っての
プラントが動き出すそうです。(もう動いているかも)
ポイントは、不用品となったものを再生するところ。

阿部さんによれば、
森の場合でも、道路整備のために取り除かれた木は産業廃棄物であり、
これを原料にすることによってコストがかからなくなる。
原料のコストを下げる工夫をすることで
導入の道が見えてくるのでは、とのことでした。

もしもこの奈良県の取り組みが実を結び
県内でもペレットビジネスに手を挙げる人(法人)が出てくるようになったとき、
山のあちこちに切り捨てられた悲しげな間伐材たちは
人を温めるペレットに生まれ変われるようになれるのでしょうか。

簡単ではないと知った今も、それは心に残るのでした。

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