プロとアマの間。

2013年10月06日

「厳しいシーズンを過ごした奈良クラブ 今期最終戦を黒星で終える」

関西サッカーリーグのtwitterに、書き込まれた言葉です。

10月5日土曜日。2位確定のアミティエとの対戦でした。
4点とられて、一点も返せず、終わってしまいました。

試合が終わると、チーム全員がいつも
サポーターの近くに来てくれます。

こんなとき、サポーターはどんな顔して選手を迎えたらいいのでしょう?
しぶい顔して「あかんやん」て、思えばいいのかな。
でも、それは選手が一番思っているはずのこと。
「いいよ、いいよ、何があっても応援するよ」って、思えばいいのかな。
でも、負けても拍手しかしないサポーターって
ほんとうに選手はやりがいを感じてくれるのかな。

みんな複雑な表情で迎えました。
選手たちに笑顔はありませんでした。
きっと、選手たちもどんな顔していいのか戸惑っていたことでしょう。

地域リーグを応援するようになって3年目の今年、
奈良クラブは外側から見る限り、動きの多い一年でした。
シーズンが始まる直前、「J3ができる」という情報が報じられました。
そのためにはJリーグ準加盟申請をして承認されなければならないとのこと。
勝ち星だけでなく、運営面その他、いろいろとクリアしないといけないことがたくさん。
ユニフォームの予約が始まると
サーバーがダウンするほどの殺到ぶりで、まずは全国のサッカーファンに注目されました。
J3への準加盟申請のため、奈良クラブは行政の応援をとりつけ、
ファンを増やすための地道な努力をしていました。
そして9月になると、準加盟申請が承認され、
これまた話題になりました。
まるでJにイケたかのように誤解する人もありました。
同時に、JFLから
J3へ移るチームの穴があき、全国地域リーグ決勝大会の上位チームがJFLに昇格しても
まだ席が残ることがわかり、決勝大会に進めなかったチームにも
JFL昇格の可能性が噂されているところです。
シーズン終盤には、元J1の岡山選手も合流。
またまた全国的な話題をさらいました。

その一方で、矢部次郎監督兼GMが率いるチームは
肝心のリーグ戦でなかなか勝てませんでした。
去年のレギュラー選手の中でもチームの勝利に大きく貢献していたと
思う選手たちが何人も退団したとき、
わたしはそれでも奈良クラブなら、きっと、
もっと強いチームを作ってくれると期待していました。
結果的にはその期待ははずれました。

悔しいけれど、今までよりは弱いチームになったことを
今は認めています。
他のチームも本気で補強しているのです。
2011年の幻想(関西リーグ優勝)を、もう捨てなくてはなりません。

「そんなに強くないけど、頑張っている奈良クラブ」
そういうことなんだと思います。

こんなとき、どうしても、選手たちのことを思ってしまう。
今年入団してくれた選手たち。
わたしが応援したときから今もいてくれている選手たち。
みんなのことが好きになれたし、
ありがとうって思ってます。

チームの内側には、わたしたちが知りえない
いろんな事情があるかもしれません。
そんな中で頑張ることも、サッカーの道だと思います。
アスリートは心が強いはず。
頑張って欲しいし、そのために
わたしたちサポーターがいると思っています。
つーか、何もできませんが
「応援してくれる人がいる」って、
絶対何か力になるはずだと思ってるんです、これでも。

(Rだって、それなしには折れてたかもしれないと思うもの。)

最後の試合で嬉しかったこと。

チーム全員のあいさつが終わって、
みんなが引き上げようとするとき、岡山選手が残りました。
なにか話したそうな雰囲気。
言葉をかわしそうになると
「オカ」の声。
チームが輪になっていて、岡山選手が戻るのを待っています。
岡山選手は輪に戻っていきました。
その輪が解かれた後で。

ふと気がつくと、岡山選手がまた、一人で
サポーターの近くに歩いてくるのです。
ピッチとの境界をなしているフェンスごしに
サポーターも岡山選手に近寄って待ちます。

変わった人です。
まっすぐな人。

「ほんまに、今日は勝てなくて申し訳ない。
みんな、いろいろ思っていることがあると思うねん。
オレ、このチームに来てまだ1ヶ月しかたってないけど
地域リーグをなめてたところがあったと思う。
みんな、すごいし。
本当なら、会わす顔がないねん。
でも、もし言いたいことがあったら言ってほしい。
オレ、聞くから
オレ、前のチームのとき、逃げたと思う。
(このあたりのことは、わたしはよくわかりませんが)
だから、絶対にもう、逃げないと決めてるから
戻ってきてん」

結果はよくないけど、
サポーターが離れないで欲しい、みたいな言葉も。

岡山選手のむこうには、いつのまにか
矢部監督とスタッフのショウゴくんの姿があって
いっしょに聞いてはるようでした。

サポーターからいくつか質問があって。
岡山選手からのコメントがあって。

サポーターからは、「負けたからって
離れるわけじゃない、応援してる」的な
言葉が聞こえてきました。
サポーターも、気持ちをうまく言えたわけではないでしょう。
ただ、わたしが思うに、岡山選手が何を言ったかよりも、
「耳を傾けようとしてくれた事実」によって、
何か伝わったような気がしました。

岡山選手は、チームの中では
別格のキャリアの持ち主。
奈良クラブの選手たちにとって未知の部分を
体験していることでしょう。
だからこそ、サポーター、選手、チームが
ひとつになれるよう、
舞台裏の奈良劇場支配人としても
望みを託せる人なのかもしれません。
そう思いたいです。

それに続いて矢部監督も
「これからも応援してください。あったかい奈良クラブをつくりたい」
というふうなお言葉あり。

そして誰もいなくなったと思ったら。

ショウゴくんが、また一人でやってきました。

「ボクは奈良クラブに来て良かったと思ってます。
これは個人の思いです。直接伝えたかったので」

彼は奈良クラブに移籍する直前まで
ディアブロッサ(奈良県でのライバルチーム)の中心的な選手だったと聞きます。
にもかかわらず、ケガで泣く泣く引退。
そして「奈良からJを」という夢をかけて
奈良クラブにやってきたと聞いています。
ディアブロッサへの不義理ともとれる決断に至るには
相当の思いがあったことが想像できます。
(ディアブロッサのことも奈良クラブに興味を持ってから知ったのですが、これはまた書きます)

その彼から奈良クラブに来て良かったという
言葉が聞けたことも、すこしホッとしました。

岡山選手の言葉
「勝っているときはいいけど、負けると
いろいろ不満とか、不安とか出てくるもの。
でもあいつのせいで負けたとか言ってたら
それまでだと思うよ」

今期の奈良クラブは5位に終わりました。
(残留できて、よかった…。汗)

再び、思う。
今となっては「そんなに強くないけど、頑張っている奈良クラブ」

リスタートです。

「また作ればいい。次のスタートラインを決めればいい」
っていう歌もありますし。
これからの奈良クラブを見届けましょう。
みんなの夢を背負った、もはやみんなのチームです。
ここまで来た以上、やってもらわなければ。

奈良からプロサッカーチームは果たして現実に誕生するでしょうか?
それは何年後のことになるでしょうか?
それまでにどんなドラマがあるのでしょうか?

見届けませんか?